「お前は最低な男だ……。おとなしそうな女ばかりひっかけて、恐怖と暴力で支配して金を巻き上げて。しかも複数人とな。これは立派な犯罪だ。恐喝だぞ? 今すぐ彼女たちと別れて金を返せ。さもないとこれを警察に渡すぞ?」
航はレコーダーを手に持ち、淡々と言った。
「フン……いつまで強がっていられるかな……?」
突然遠藤が不敵に笑った。
「何だよ?」
航は首を傾げた。
「この俺が何の準備もせずに、ノコノコお前の前に現れたと思ってんのか?」
「どういう……意味だよ……」
すると茂みからガサガサと音が聞こえ、そこから2人のガラの悪そうな若い男が出てきた。
「あ……」
美由紀がそれを見て息を飲んだ。
(そ、そんな……仲間がいたなんて……航君……!)
美由紀は前に立つ航を身体を震わせながら見つめた。
「へへへ……。どうだ? 驚いたか?」
遠藤は勝ち誇ったように笑う。ほかの2名の男たちも下卑た笑いをした。それを黙って見ていた航は溜息をつく。
「ほんっとに馬鹿だな……てめえらは……」
「「「何だと!?」」」
3人が同時に声を上げる。
「準備不足なのはお前らの方だ……。おい、みんな」
航が背後の茂みに声をかけた。すると、茂みや木の陰から10人前後の男たちが現れ、ゆっくりと進み出てきたのだ。全員屈強そうな身体の若い男たちばかりであった。中には指をポキポキ鳴らしている男もいる。
そして航を中心に左右に並んだ。
「ヒイ!」
遠藤と2人の男の顔に恐怖が宿る。
「俺がてめえのような卑怯な男相手に……1人で来ると思ってるんだ?」
冷めた目で遠藤を見る航。そして一歩近づく男たち。
「ヒイイッ!! わ、悪かった! わ、別れる! 別れます!」
腰が抜けたのか、地面にドサリと座り込んだ遠藤が震えながら航に頭を下げる。
「そうか? 別れるんだな? 今の言葉も録音させてもらったからな。金も返せよ?」
航はボイスレコーダーを見せた。
「あ、ああ……か、金も……必ず返すから……!」
「よし、なら仲間を連れてさっさとここから立ち去れ!!」
航が怒鳴ると遠藤たちは逃げるように公園を走り去っていった。
「ふう…」
3人が見えなくなると、航は溜息をついて男たちに声をかけた。
「皆さん。ご苦労様でした。それじゃ全員にバイト代払うんで並んでください」
「「「「え……?」」」」
美由紀たちは間の抜けた声を出した。しかし、それをよそに